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今回の債務上限問題の状況
- 現在、①2022会計年度継続予算、②債務上限一時停止(2022/12/16まで)、③5000億ドルインフラ投資法案、④3.5兆ドルの歳出法案、の4つの重要議題が同時並行で進んでいます。③は上院超党派で可決されていまして下院でも恐らく通過するでしょう。④は法的拘束力のない予算決議案は、既に上下院を通過していますが、①が通過しなければ実行できません。しかし、①と②はセットで既に下院で可決されていますが、共和党は②に関して民主党のみで対応するべきということで反対しており、②が通らないということは、今回①と②をセットで却下された形になっていることから、10/1からの新年度開始を前につなぎ予算を成立させつつ債務上限についても話さないといけないわけで全く時間が足りません。しかし、①に関しては9/30ぎりぎりで9週間の暫定予算を成立させました。したがって、とりあえず10/1から政府機関閉鎖は回避されました。ただ、②はまだ通過していません。イエレン議長は10/18がタイムリミットだと明言していますが、このままでは10月半ばで新規国債が発行できないことになり、償還国債分の借り換えができずデフォルトとなる恐れがあります。
- 債券市場ではデフォルトを警戒し既に10月後半から11月前半に償還を迎える国債は売られています。最悪の場合、財政調整法を使って民主党が単独で解決する道がありますが、民主党内でも一部反対派がいることと、共和党を巻き込んだうえで合意を目指すという民主党の思惑があるため、なかなか話が進展しません。
- 民主・共和両党はデフォルト回避のための債務上限引き上げの必要性では一致しつつも、誰が行動すべきかに関しては真っ向から対立しています。
共和党のマコネル上院院内総務は、民主党の巨額の支出法案を単独で成立させようとしているのだから、全ての責任を民主党が負うべきだという主張です。一方で、民主党のシューマー上院院内総務は、トランプ前政権時の2017年の減税のおかげで財政が枯渇したのに責任逃れをするなという主張です。
債務上限問題は2022年の中間選挙を念頭に、バイデン大統領の優先施策について米国民の受け止め方を自党に有利な形に方向付けようとする与野党の駆け引きの一部となっているため、両党がなかなか合意できない状態になっています。
万が一米国債がデフォルトということになりますと、これまでの通説であるリスクオフの米債買い(米金利低下)・USD買いという流れが否定されることになり、もしかしたら円の独歩高になるかもしれません。